zo-santotea’s diary

読書日記。1週間に3回アウトプット。

「ヒストリア」池上永一

主人公である知花煉の生き方が風と共に去りぬみたいな話しだなって思った。

 

チェゲバラの愛人になったり、魂と肉体が離れて同一人物が二人存在したり、旧ナチスの将校と争ったり、キューバに核を運ぼうとしたりととなかなかすごい設定だなと思ったけど、強く自分の明日のために生きている姿は好きだ。

 

マジックリアリズムという、日常のものが非日常のものと融合するラテンアメリカの考え方を反映させているのかな。

 

考え事をするときに手の込んだ料理をするところとか好き。古い小豆を餡にする時は煮汁がトマトジュースの色になるまで根気よく渋切りするらしい。

あと、沖縄の人から見た太平洋戦争はこう見えるんだと言うのが、わかった。そうだよねって思いながら、よくはないけど、対岸の火事的な見方になってしまう。

 

好きなところが三箇所あった。

 

1,人は誰も自分は善人だと無邪気に信じている。また、裏切られたり騙されたりした被害者のように振る舞うが、私は違う。私は生きるために人を騙した。私の人生は加害者であることの方がずっと多い。だが絶対に謝らないし、償わないし、贖わない。私に関わった罪なき人たちは私を恨めばいいと思う。それで気がすむのなら。

 

2,私は良い社会を望んでいるが、自分の失敗を政府のせいにはしない。なぜなら私の意志よりも上位の存在などあってはならないと思うからだ。

 

3,カーゴカルトの話しを思い出す。文明を知らない未開の原住民が飛行機から投下される物資を神の恵みだと考え、地上に藁で作った雄の飛行機の模型を作り、上空の雄の飛行機を誘惑するという逸話だ。

彼らは飛行機の背後にある工業文明を知らない。白人たちは魔法使いのように、何もない空間から完成品を生み出すと信じている。私はこれを笑い話として聞けない。まさに私が原住民側なのだから。大地主を追い出した後も、畑が魔法のように作物を育てるものと信じている。

 

 

2019/2/1-2019/2/10